冨樫義博の世界観『幽遊白書』『レベルE』『HUNTER×HUNTER』

私の少年時代の代表的少年漫画といえば、冨樫義博の『幽遊白書』だった。

我々「幽遊白書世代」は、前には『ドラゴンボール』、後ろには『ワンピース』という少年漫画の金字塔のような二作品に挟まれてやや肩身の狭い感じだが、それでも少年の頃夢中になった事実に変わりはない。

ここではその『幽遊白書』と『レベルE』という作品の個人的な印象に触れた後、二作品のラストの共通点、またそこから『HUNTER×HUNTER』(ハンターハンター)の世界への移行とを追っていくことにする。

冨樫義博の世界観

『幽遊白書』

『幽遊白書』は当初、一話完結型の構成で進んでいたが、4巻頃から方向転換して王道のバトル系少年漫画になったことは読者には説明するまでもないだろう。

たしか初登場時、飛影が全身の皮膚が緑色になり、なおかつ不気味な目玉だらけになるという変身が可能だったはずだが、味方になった後で「邪悪な気が失せたからそのような変身ができなくなった」みたいなもっともらしい説明もなく、そんな設定はなかったことにしているのは、かえって潔い。

もちろん戸愚呂兄弟の暗黒武術会篇や「能力者」の登場する仙水篇も面白かったが、個人的には最終的なトーナメント勝者が雷禅の旧友の煙鬼というところも含めて、終盤の魔界篇が一番好きだった。

『レベルE』

初めて『レベルE』に触れたのは、小学生の高学年の頃、同級生の中では大人びた友達の家の部屋に転がっているのを見た記憶だ。

個人的には『レベルE』は高学年であっても小学生には敷居の高い作品という印象だが、彼は面白いと感じていたらしい。

もう一人の遊びに来ていた友達とその彼が「『レベルE』って面白いか?」「えっ、面白れーだろ」という会話をしていた記憶がぼんやりとある。

当然、当時の私にも『レベルE』は何が面白いのか分からなかった。

私が買い求めて読んで、素直に面白いと思えたのは確か高校の頃だから、そんな年齢で『レベルE』を面白いと感じることのできる小学生はやはり早熟だと思う。

作中に出てくる「ドグラ星」と「マグラ星」は夢野久作の『ドグラマグラ』から、クリニックの医者の名前は「坂口安吾」をもじったもの、受付の女がいっちゃってる感じなのは安吾の『白痴』をモチーフにしている、という点には自力で気づくことができたが、隊長や隊員の名前の「クラフト」や「コリン」も作家の名前から来ていることは、他の人に指摘されなければ気付くことはできなかった。

と言うか、こんなことを書くのは負け惜しみじみてるが、私はそちらの作家たちを知らないので気付きようがなかった。

『幽遊白書』と『レベルE』のラストの共通点

ところで、『幽遊白書』と『レベルE』のラストには共通点がある。

『幽遊白書』の終わりでは、あれほど仙水篇で阻止しようとした魔界への扉を解放している。

また『レベルE』でも、ラストでは地球と他の星との行き来が盛んになっているという描写で幕を閉じている。

つまり二作品はともに、人間の住む世界と異界とが地続きになったところで幕を下ろしているのだ。

この二つのラストから、当時の冨樫義博にとって究極的な夢とは「異界との調和」であったことを窺うことができる。

『HUNTER×HUNTER』

そこでまだまだ終わりそうにないものの、今連載中の『HUNTER×HUNTER』も、冨樫の夢に変化がなければ「異界との調和」によって幕を下ろすだろう、と結論しようとしたが、見ようによっては『HUNTER×HUNTER』の世界は既に異界と調和しているようにも思える。

つまり『幽遊白書』と『レベルE』の二作品は異界と調和して異界と人間界が地続きになるところで幕を下ろしているが、『HUNTER×HUNTER』の世界は既に異界と調和している、もしくは『HUNTER×HUNTER』の世界それ自体が既に、舞台として異界を選択しているという風にも読める。

だが「異界」とは常に「ここではない何処(どこ)か」だ。「異界」の内部を舞台に設定した時点で、それは既に「異界」ではなくなっている。

だからこそ冨樫は「更なる異界」として「暗黒大陸」を作ったのかもしれない。

結局、小説であれ漫画であれ、作り手の個性の本質というのは作品が変わろうと変化しないものなのだと思う。

冨樫の作品には、いつも「ここではない何処か」への憧れが見られる、と言ったら穿(うが)ち過ぎだろうか。

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