かわぐちかいじが漫画原作の映画『空母いぶき』について、ビックコミック誌上で俳優の佐藤浩市が受けたインタビューが炎上した。
炎上した理由の一つである「安倍首相の病気を揶揄した」というのは誤読ではないかという向きもあるが、この佐藤浩市のインタビュー発言に、作家の百田尚樹、幻冬舎社長の見城徹、高須クリニック院長の高須克弥がどのように反応したかをまとめた。
産経新聞・阿比留瑠比の書き込み
左寄りのネットメディア「リテラ」によると、炎上の切っ掛けは産経新聞の政治部編集委員・阿比留瑠比が5月10日夜にしたフェイスブックでのこのような書き込みだという。
観に行こうかと考えていた映画『空母いぶき』に関心を失った件について。
『ビッグコミック』誌のインタビューに、首相役の俳優、佐藤浩市氏がこう述べているのが掲載されていたのを読んでしらけたからです。
「最初は絶対やりたくないと思いました(笑)。いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感が、まだ僕らの世代の役者には残ってるんですね」
「彼(首相)はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。だからトイレのシーンでは個室から出てきます」
……はあ。あえてアレコレ言う気もおきません。次は三田村某さんに続いて菅直人元首相の役でもやるといいですね。どうでもいいや。
引用:リテラ記事
作家の百田尚樹の反応
百田尚樹は最初、阿比留の上記書き込みを引用したツイートをリツイートし、「映画(佐藤浩市が出演する『空母いぶき』)は見ない!」と宣言、そこから映画『空母いぶき』に批判的なツイートのリツイートや直接百田が批判するツイートが続く。
原作は好きやけど、映画は絶対観ない!! https://t.co/XatYWdE2tj
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
嫌なら断固として引き受けなきゃいいのに、ビッグプロジェクトを断るのが惜しいから、結局役柄を貶めて引き受ける…失礼な上に実にみみっちい。お仲間に転向者呼ばわりされるのがそんなに嫌なのか、情けないですね、佐藤浩市さん。
引き受けたなら自分の主義主張を仕事に持ち込まないで欲しいです。— ハナニラ (@ni04Ep3Xt4lcCqT) 2019年5月12日
思想的にかぶれた役者のたわごとを聞いて、下痢する首相に脚本を変更するような監督の映画なんか観る気がしないというだけ。
文句ありますか! https://t.co/FvCA2qhSvz— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
そんなへなちょこ映画、観てられるか!
絶対に観ない!!!! https://t.co/CGuSkm1CIg— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
「空母いぶき」の原作は素晴らしい!
しかし映画化では、中国軍が謎の国に変えられているらしい。それだけでも不快だったのに、「下痢する弱い首相にしてくれ」という一役者の要求に、脚本をそう変えたと聞いて、もう絶対に観ないときめた。— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
三流役者が、えらそうに!!
何がぼくらの世代では、だ。
人殺しの役も、変態の役も、見事に演じるのが役者だろうが! https://t.co/UReRTd6KNe— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
この百田の「三流役者」発言を受けて、ウーマンラッシュアワーの村本やラサール石井が批判的な立場でツイートしている。

続く百田のツイート。
私は自分の作品の映画化に関して、キャスティングに口出ししたことは一度もない。
しかし、もし今後、私の小説が映画化されることがあれば、佐藤浩市だけはNGを出させてもらう。 https://t.co/bKAJf7dYgC— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
佐藤浩市の「下痢する首相にしてもらった」というインタビュー記事が、大炎上してる。
おそらく明日あたり制作会社がコメントするだろうな。
「記事は実際のコメントとは違う。間違ったニュアンスで伝えられた」とか何とか…。
今頃、スタッフがその文章を必死に作っているとこかな。ご愁傷様やで。— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2019年5月12日
幻冬舎社長の見城徹
そこから幻冬舎社長の見城徹も騒動の渦中に入る。
佐藤浩市さんは何でこんなこと言ったんだろう?三流役者だとは思わないが、百田尚樹さんの言う通りだ。大体、そんなに嫌なら出なければいいだけだ。しかも、人の難病をこんな風に言うなんて。観たいと思っていた映画だけど、僕も観るのはやめました。 https://t.co/0MH3ApMetH
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
百田尚樹もリツイート
見城のこれらのツイートは百田尚樹によってもリツイートされている。
[体制側の立場]って一体何だ?それはさておき、役者が[体制側の立場]を演じることに抵抗感があるんなら、俳優をやめた方がいいよ。本木雅弘は昭和天皇を見事に演じた。役所広司の徳川家康には舌を巻いた。表現に安っぽい主義主張を出して来るのは共産党系か新興宗教系の俳優だけだと思っていたよ。
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
佐藤浩市さんは大好きな俳優だった。しかし、これは酷い。見過ごせない。こんなことを言うんなら、断るべきだった。佐藤浩市さんの要求を飲んだ製作側も情けない。
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
この下のツイートなどを見ると完全に、見城が「佐藤が『空母いぶき』で演じた総理大臣=安倍総理」という前提で話しているのが分かる。
佐藤浩市さんの真意は[安倍首相を演じるのに抵抗感があった]ということだと思う。それを[体制側]などと婉曲に言うからおかしなことになる。だったら出演を断れば良かった。脚本変更を要求して、病気を笑い者にするように演じたなら、黙して語らないことだ。そんな悪意のある演技を観たくもないよ。
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
続けて佐藤浩市を批判
見城はなおも続けて佐藤浩市を批判する。
自分の安っぽいイデオロギーのためにこの映画の本質をぶち壊していることに何故、想いが至らないのだろう?映画は一人の役者のイデオロギーのためにあるのではないんだよ。最悪だ。
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
実は昨夜、会食をした芸能プロダクションの社長から、
「うちの俳優が出ているので是非、観て下さい」
とチケットを2枚頂いた。最初から首相を貶める政治的な目的で首相役を演じている映画など観たくもない。自分の発言がどれだけ共演者やスタッフに迷惑をかけているか、よく考えて欲しい。 pic.twitter.com/tjvAicDMT7— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
批判ツイートをリツイート
また見城は佐藤浩市の発言を同様にとらえたツイートを数多くリツイートしている。
そしてこれらのツイートからは「安倍を揶揄」→「安倍の病気を揶揄」→「病気の人を揶揄」という風に解釈がスライドしていくのが分かる。
佐藤浩市さん、好きな部類の役者さんだったけど、インタビューの内容が信じられない😵
主張が的外れ。
出演断って、堂々と政治批判する方が、余程潔い。
この要求飲んだってことは、監督始めスタッフサイドも同意したってこと。
かわぐちかいじさんに失礼過ぎる。— ゆうこりん☆ (@kaoriWIND) 2019年5月12日
お腹すぐ壊すってなんか揶揄してますよね。。
見損ないました。
もう佐藤浩市の出てる作品は観ない。— Makotto☆ (@yu_mako1111) 2019年5月12日
潰瘍性大腸炎は難病なんですよね
患者はかなり大変なのによく首相を揶揄するのに使ってて非常に無神経だと思います
難病差別ですそれとこの原作を読んで映画見たいといってる人にこの話伝えたらなぜ出るのかと激怒してました
俳優は他にもいるだろうに、原作とは違うようですね内容が— ちかJCてぁん (@chikachika02271) 2019年5月12日
また「佐藤浩市演じる総理=安倍総理」説は断定できるものではないと指摘する人に対して、見城はかなりキツイ反論の言葉を返している。さすがにこれは言い過ぎだろう。
おまえ、バカか。下らないことを言って、なんか言ったと自己満足してんじゃないよ。誰が読んだって安倍首相のことだろう。忖度なんかしてないよ。忖度という意味が解っているのかね?バカは死ななきゃ治らない。なにか言うにしても、もう少しマシなことを言えよ。 https://t.co/KBsvIoSXKT
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
演じる対象に批判や悪意があるなら、そのように演じるだろう。それは役者の勝手だ。インタヴューで自分の主義・主張を語るのも構わない。しかし、「出演するのに抵抗感があったから、首相役をストレスに弱く、すぐにお腹を下す設定にしてもらった」と語るのはどうだろう?そんな映画、観たくもない。
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
映画で首相役を演じるのに、何故、抵抗感があるのか?僕には解らない。体制側の人間だからというのなら殆どの役は出来なくなる。原作の垂水首相を無理やり安倍首相と結び付けるのも変だ。自分の主義・主張のために映画をプロパガンダの手段にするのはもっと変だ。役者なのに映画と原作を舐めている。
— 見城 徹 (@kenjo_toru1229) 2019年5月12日
ただここで見城を擁護するなら、見城は優れた原作を世に送り出す「出版社社長」という職業上、原作を歪めてしまうような役者の作為がなおさら許せなかったのかもしれない。
高須クリニック院長の高須克弥の反応
高須クリニックの高須院長は、佐藤に批判的なツイートを「💢😠💢」というマークをつけてリツイートした。
— 高須克弥 (@katsuyatakasu) 2019年5月12日
しかし高須院長としては珍しく(?)論争の渦中には加わらず静観した。
そして後に佐藤のインタビューへの誤読だというツイートで自分の名前が挙がると、それに釘を刺して今回の件では局外者である姿勢をアピールしている。
わし何も発言してない
👇だけ
💢😠💢 https://t.co/Ts08uK7qyK— 高須克弥 (@katsuyatakasu) 2019年5月15日
3人の反応に対しての批判
誤読と解している人の中には、この3名をまとめて批判している人もいる。
またか、産経記者が文読めないまま拡散し、百田尚樹氏、幻冬舎社長、高須院長が泥船にのって拡散。また大迷惑をかけているようだが、たぶん何の責任も取らない人たち。#ネトウヨ被害#産経 #阿比留瑠比 https://t.co/8MEYDDyUUY
— Osprey Fuan Club (@ospreyfuanclub) 2019年5月13日
同様に発端となった産経新聞の阿比留も批判されている。
#産経新聞 #阿比留瑠比 にとって大事なのは「よく燃える素材かどうか(燃えにくければ燃焼剤を追加すればいい)」という事だけであってそれが事実か否かはどうでもいい事なのだろう。#百田尚樹 #高須克弥 達は所詮踊る阿呆に過ぎない #佐藤浩市 #空母いぶき pic.twitter.com/4D1lYznbNI
— かるまじろ (@karmajiro) 2019年5月14日
ただし阿比留自体は別に誤読したわけではない気がする。
(もし今出ている阿比留の書き込みが全てであるならの話だが)佐藤の「いわゆる体制側の立場を演じることに対する抵抗感」と「すぐにお腹を下してしまうっていう設定」という発言を並列的に抜粋しただけだからだ。
そこに因果関係があるかのように読んだのはそれを拡散した側の人ではないか。
特に拡散の経緯を追っていくと、決定的に「佐藤浩市が演じた総理役=安倍総理」という解釈が成立したのが幻冬舎の見城徹社長によっているように思える。
しかし、普段から左派の口の悪い者は安倍を腹部の病気にかこつけて揶揄するために、見城がそう解釈せずとも別の人によって自然に成立した可能性もある。
安倍の潰瘍性大腸炎を揶揄したんだろうな。反体制気取りの人はすぐアベ下痢ゾウとか言いだすよな
映画『空母いぶき』の首相役の佐藤浩市氏が「彼はストレスに弱くて、すぐにお腹を下してしまうっていう設定にしてもらったんです。」と発言 https://t.co/bnyyIqVUak
— ネムイ (東京) (@sleepykei) 2019年5月12日
あるいは、見城自身が他の人のツイートを読んでそれに同調したのだろうか。
阿比留のことに話を戻すと、阿比留は単に佐藤浩市が「体制」にアレルギーを示したように、佐藤浩市の「反体制」にアレルギーを示しただけなのではないかと思う。
だから阿比留自身は佐藤を誤解したわけではないという可能性もある。