「最大の恐怖は無力と知ることではない」出典は?『コーチ・カーター』名言

実話をもとにしたアメリカの高校バスケットボールチームの監督の物語『コーチ・カーター』にひと際印象深い言葉が出てきます。

それは「最大の恐怖は無力と知ることではない。最大の恐怖は自分の計り知れない力だ」という言葉です。

この言葉の出典を調べてみると、マリアン・ウイリアムソンの『愛への帰還―光への道「奇跡の学習コース」』という自己啓発本であることが判明しました。

またそれとともに、ネルソン・マンデラ大統領に関する興味深いエピソードが出てきたので、それも合わせて紹介したいと思います。

『コーチ・カーター』名言
「最大の恐怖は無力と知ることではない」

コーチ・カーターは物語中で生徒のチモ・クルーズに「最大の恐怖とは何だ?」とたびたび問いかけます。

チモ・クルーズは最初「?」となりますが、あるシーンで自ら調べて判明したその言葉の続きを言うことになります。それがこの言葉です。

最大の恐怖は無力と知ることではない

最大の恐怖は自分の計り知れない力だ

恐ろしいのは自分の闇ではなく光

自分の力を隠し、周囲の者たちを不安にさせないよう縮こまっていては世界を照らすことはできない

小さな子供らと同じように輝こう

すべての人の内に光がある

自分自身を輝かせれば、まわりの者たちも自然と輝きはじめる

恐怖から解き放たれさえすれば、まわりの者達も解き放つことになる

Coach Carter (6/9) Movie CLIP – Our Deepest Fear (2005) HD

「最大の恐怖は無力と知ることではない」
出典は『愛への帰還―光への道「奇跡の学習コース」』

この言葉はマリアン・ウイリアムソンの『愛への帰還―光への道「奇跡の学習コース」』の中にあるものです。

ちょっとややこしいですが、『愛への帰還―光への道「奇跡の学習コース」』は『奇跡の学習コース』あるいは『奇跡のコース』(A COURSE IN MIRACLES)という自己啓発の書籍を解説した自己啓発本です。

例えて言えば仏教の経典を解釈している仏教本のようなものですね。

前置きが長くなりましたが、「コーチ・カーター」に出てきた『愛への帰還』の例の言葉に戻ります。

まず太陽出版から出ている大内博氏訳の文では映画とは若干言葉が違います。映画の中の言葉の方がすんなり入ってくる感じで、また映画では一部省略されている言葉もあるようです。

大内博氏訳の『愛への帰還―光への道「奇跡の学習コース」』から、適宜改行しながら該当箇所を引用してみましょう。

太字部分は『奇跡のコース』(奇跡の学習コース)からの引用になります。

『コース』の中に次のような一節があります。

私たちが最も深く恐れているのは、
私たちが不十分な存在であるということではない。

私たちが最も深く恐れていることは、
私たちが計り知れないほどに力に満ちた存在であるということである。

私たちを最も怯えさせるのは私たちの闇ではなく、光である。

私たちは自問します。
「私が素晴らしく、ゴージャスで、才能があって、
信じがたい存在だなんてことはあり得ない」。

実際には私たちはどんな存在にでもなれます。私たちは神の子なのです。

自分を過少に評価して、その役割を演じるのは世のためになりません。

他の人たちがあなたのまわりで圧倒されないように気遣って、
自分を小さくすることには、啓蒙的な要素は何もありません。

私たちは誰でも、子供たちがそうであるのと同様に、
光り輝くことになっている存在です。

私たちは自分の中にある神の栄光を顕在化するために、
この世の中に生まれて来ました。

それは一部の人にだけあるのではなく、すべての人にあります。

私たちが自分自身の光を輝かせる時、
他の人たちにも同じことをする許可を与えます。

私たちが自分自身の恐怖感から解放されると、
私たちの存在そのものが他の人たちを自動的に解放します。

引用:『愛への帰還―光への道「奇跡の学習コース」』204~205頁

どうでしょうか。

映画でのセリフと同じ意味の文ですが、やや堅い言葉(翻訳)になっています。

ネルソン・マンデラの興味深いエピソード

興味深いのは、本の巻末で訳者の大内博氏が触れているエピソードです。

というのも、1994年に南アフリカ共和国でアパルトヘイト政策が崩壊して、黒人のネルソン・マンデラが選挙で大統領に選ばれた時、該当の「私たちが最も深く恐れているのは」から「自動的に開放します」までの文章が、ネルソン・マンデラの就任演説の言葉として世界中の英語圏で流布されたそうです

もちろんそれは虚偽情報で、実際にはマンデラはそのような言葉を就任演説では言ってはいませんでした

この言葉に感動した人びとが、友人にファックスで流したり、自分の名刺に刷り込んだり、インターネットで交換したり、結婚のお知らせのカードに掲載したりと、とにかく大流行したのです。

日本に住む私たちのところにも、何人かの外国の友人からファックスが送られてきました。

そして、これはマンデーラ大統領の就任演説からの抜粋であるというのです。

引用:『愛への帰還』訳者あとがき

それが『愛への帰還』からの抜粋だと気付いた訳者の奥さんのジャネットさんが、マンデラ大統領の就任の席にゲストとして招かれたリン・ツイストという人に伝えました。

するとそのリン・ツイストさんもマリアン・ウイリアムソンの愛読者だったので、このようなデマが流布されるのはマリアンのためにフェアではないと思い、マンデラに手紙を出して伝えました。

マンデラ大統領はリン・ツイストに「私はそんなことは言っていない」と返事をして、ニューヨーク・タイムズに掲載された本物の就任演説の全文を送ります。

そこには確かにそんな言葉は見当たらなかったそうです。

そこでリン・ツイストは、誰かがマンデラ大統領の演説からの抜粋として例の言葉に言及する度に訂正するようにしていたのですが、しばらくするとその出来事自体に深い理由があるように感じ始め、訂正することをやめてしまいました

「非常に深遠な真実が語られ、それが多くの人びとの波長に合った時、それはユニヴァース(宇宙)のものとなる。英語の universe を分析すれば〈「一」に属する言葉〉である。一つとは oneness であり、すなわち私たちすべてを指す。したがって、その言葉は私たち皆の財産である」。

引用:『愛への帰還』訳者あとがき

それを聞いて大内氏も納得、「何か次元を超えた力が働いているように思え」、「誰が言った」という事実が大切ではなく、その言葉を知ってもらう切っ掛けになることの方が大事だと考えるようになったとか。

ちなみにここで登場したリン・ツイストという人も自己啓発系の有名な人です。

リン・ツイストさんが語る「心配や不安のない人生を生きるには?」

ネルソン・マンデラの「マンデラ効果」

この話の重要な鍵となっている人物が、南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領だというのはもっともな感じがします。

というのはマンデラについては他にも不思議な話があるからです。

Wikipediaによれば、2013年まで存命していたマンデラについて、1980年代に獄中死したという誤った記憶を持つ人が大勢現れるという不思議なことがありました。

この現象は「マンデラ効果(Mandela Effect)」とも呼ばれ、アメリカの超常現象研究家フィオナ・ブルームが提唱したものです。

ブルームはあるイベントで、自分自身と同じマンデラの死期に関する間違った記憶を大勢の人が共有していることに気付きます。

そこでブルームがこの現象を扱うサイト「The Mandela Effect」を開設したところ、同じような経験を持つ人のコメントが数万件規模で寄せられたとか。

こうした不思議な現象についても合理的に説明がつくという見方もありますが、超常的現象という解釈を招きやすいこうした出来事が、ともに「ネルソン・マンデラ」というキーワードを軸に展開されたというのは、非常に興味深いことだと思います。

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