綾野剛さんが主人公・諸星要一を演じた『日本で一番悪い奴ら』は、実在した刑事や事件がモデルの映画です。
この映画には諸星のS(スパイ)として一緒に活動し、拳銃200丁を摘発するために意図的に見逃した麻薬を持ち逃げしてしまう中村獅童演じる「黒岩」という男が登場しました。
モデルになった事件は、主人公・諸星要一のモデルとなった刑事「稲葉圭昭」の名前から「稲葉事件」と呼ばれていますが、稲葉事件で黒岩のモデルとなった人物は実在したのでしょうか?
いたとすれば、シャブを持ち逃げした黒岩はその後どうなり、現在ではどうしているのでしょうか?
こういったことを調査してまとめました。
シャブ持ち逃げの黒岩は実在した
結論から言えば、黒岩のモデルになったであろう男は実在したようです。
「石上」という男が黒岩のモデルになった人間です。
石上はシャブを運んだ後にバックレてしまいました。
このシャブの量は映画では120キロでしたが、実際にはもう少しだけ多く、1キロの袋が130袋で計130キロあったそうです。
稲葉事件 黒岩のモデルのその後は?
そしてその後、シャブを持ち逃げした石上は、てっきり多くのシャブを持ち去ったのだから大儲けして左うちわで暮らした、ということを想像してしまいますが、実際にはそうではないようです。
シャブを持ち逃げした石上は、覚醒剤130キロの代金8000万を香港マフィアに支払わなかったためにトラブルになり、その金を回収しに来た香港マフィアに対して、稲葉氏が半金の4000万を持ち逃げしたと嘘をついています。
奴は覚醒剤130キロの代金8000万を香港マフィアに払ってなかった。カネの回収に来た香港の連中に、その半金の4000万を俺が持ち逃げしたと言い訳をしたらしい。俺が刑務所に入って間もないころ、弁護士が面会に来てそう言うから、「そんな馬鹿な話あるわけないじゃないですか。先生、付け馬みたいなマネやめてくださいよ」と怒ったんです。石上が、香港マフィアと繫がっている別のエスを連れて弁護士の事務所に行ってカネを要求したそうだけど、奴らが言うことを弁護士が鵜呑みにしたことも腹立たしかった。
石上が「半金の4000万を持ち逃げされた」と嘘をついていることから、半分は払うことができたが、それ以上支払えるほど潤ってはいなかったということでしょう。
もし本当は金を払えるのに居直って払わなかったとしたら大したものですが、さすがに香港マフィアに対してそこまで危険な賭けをするとは思えませんから、実際に払う金がなかったということではないでしょうか。
だとしたら、石上は警察を裏切ってまで大量のシャブを持ち逃げしたのに、そこまでうまい汁を吸えなかったということになりそうです。
ただし石上はその後香港マフィアや別のヤクザに殺されたりすることもなく、稲葉圭昭氏が2017年に答えたインタビュー中では、石上について「(今でも)北海道にいるらしい」と話しています。
そして稲葉圭昭氏は前述の服役中に嫌な思いを重ねたこともあり、もう石上に「会いたいとは思わない」とも話しています。
稲葉圭昭は現在は八百屋と探偵を兼業
ちなみに稲葉圭昭氏は現在では「八百屋と探偵業」という変わった取り合わせの仕事をこなして生計を立てているそうです。
2017年のインタビューでこのように語っています。
探偵はやりたくなかったんだけど、友達に探偵を紹介してくれと頼まれて、他人を紹介するなら自分でやったほうがいいと思って始めました。下の息子とふたりでやってます。
稲葉氏が経営する探偵事務所は「いなば探偵事務所」といい、そのホームページ上ではかなりあけっぴろげに「『日本で一番悪い奴ら』のモデルになった刑事」ということをアピールして、映画と事件の知名度を宣伝に活用しています。