池袋で87歳の高齢者男性の車が暴走して、2人が死亡・計10人を死傷させた事故で、ネットやSNSを通じて、この男性が実名報道も逮捕もされないのは旧官僚で「上級国民」だからだという憶測が広まっています。
続けてあまり間を置かず起こった神戸市営バスの事故では、犯人の運転手が直後に逮捕されたことから、この憶測を強化させる結果となっているようです。
真相はいったいどこにあるのでしょうか?
池袋事故犯人の飯塚幸三の経歴は?
池袋での事故を起こした男性は飯塚幸三さん(87)。
1931年生まれ、東京府豊多摩郡中野町(現在の東京都中野区)の出身。
東京大学工学部を卒業しており、旧通産省官僚の元工業技術院長、また農業機器を作る会社として有名なクボタの役員でもありました。
2015年には瑞宝重光章を叙勲しています。
池袋プリウス事故 犯人の飯塚幸三(87)は東大卒の旧通産省・元工業技術院長 クボタの元副社長。平成27年秋の勲章受章者。 pic.twitter.com/Wb1zWdL0QJ
— sakamobi.com (@sakamobi) 2019年4月19日
こうしたことから「上級国民」だから実名報道・逮捕がされないのだ、という憶測が流れることになりました。
飯塚幸三が逮捕されない理由は?
飯塚幸三さんが逮捕されない一番の理由は、上級国民だからではなく、ケガをして入院中であり、また87歳と非常に高齢で、そのために逃亡や証拠隠滅の恐れがないからだと考えられます。
入院中は逮捕されない。日本のサスペンスドラマなんかでよく出る情報だから常識だと思ってたんだけど上級国民〜と叫んでるツイが頻繁に流れてくるから常識ではないんかなぁ
— 爆走まぐろ (@bakusoumaguro) 2019年4月21日
市バスの運転手は逮捕され、池袋の老人は逮捕されなかったことに疑問抱く人が多いのに驚いた。
市バスの運転手は怪我などがない状態。
池袋の老人は、入院しなければならない状態だった。
その差だよ。
退院後に逮捕されるから— d o s (@ylevol1985) 2019年4月21日
検察庁のホームページによると、捜査手続では、容疑者の身柄を拘束しないまま手続をすすめる「在宅事件」と、被疑者の身柄を拘束(逮捕・勾留)して手続をすすめる「身柄事件」がある。
いずれによるかは、(1)犯罪の重大性・悪質性、(2)逃亡のおそれ、(3)証拠隠滅のおそれなど、事情を総合して判断することになっている。
報道によると、男性は骨折して入院しており、警視庁はその回復を待って、自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)の疑いで話を聞くという。共同通信は「警視庁は証拠隠滅の恐れがないと判断、男性を逮捕せず任意で捜査を進める」と報じている。
つまり、「上級国民」かどうかは関係ないのだ。
引用:弁護士ドットコムニュース
「容疑者」がつけられない理由
また名前が報道された場合に「さん」付けで「容疑者」がつけられない理由は、まだ逮捕されていないためだと考えられます。
Wikipediaの「被疑者」内「『容疑者』の語について」にはこのようにありました。
マスメディアでは逮捕または指名手配などで身柄拘束されるかまたはされることがほぼ確実な状態のときに「容疑者」と呼び、身柄拘束されていない限りは「容疑者」は用いず「さん」付けか肩書で呼称しているが、上記のとおり、法律上は身柄拘束されていなくても容疑があれば被疑者である。
引用:Wikipedia
つまりマスメディアの慣習上、未逮捕の人に「さん」付しているだけだと考えられます。
また「市営バス運転手は『容疑者』で、なおかつ即逮捕なのに池袋の事故はおかしい」という言い方をすると、「逮捕されない」+「容疑者と呼ばれない」と2つのおかしなことがあるかのような表現になりますが、「容疑者」と呼ばれないのは逮捕されていない結果であって、実際にはこの2つのことは一つのことだと言えます。
最後に
飯塚さんは事故後、110・119番せずに真っ先に息子さんに電話し、フェイスブック削除や自宅の電話番号の解約などの処置をしました。
飯塚さんはその経歴から事後処理や法律の機微に通じており、病院に入院しているのも、そのような状況では警察は手出しできないことを知っているせいかもしれません。
こうした自己保身の手回しの良さから、なおさらバッシングを浴びているようです。
このようなことが起こると、ネガティブな感情は伝達力が大きいので、ネットやSNSでは憤り・怒りを煽るような情報が溢れます。
それでも、そのすべてを鵜呑みにしないように気をつけた方がいいと思います。
何よりこの事故を他人事と思わず、身近に高齢者のドライバーがいる方は、免許証の返納を勧めるなどした方がいいでしょう。
以上です。