古谷実の諸作品・幸福のイメージの再現

少年の頃、古谷実の『行け!稲中卓球部』を読んで腹を抱えて笑った人は多いだろうと思う。私もその一人だ。そのことだけではないが、古谷実が特別な漫画家の一人だという思いは今でも持っている。

古谷実の諸作品

幸福のイメージの再現

『ヒミズ』で、古谷の作風は突然陰鬱になる。
私がしっかり読んだのはその『ヒミズ』までだと思う。

それ以後の『シガテラ』『わにとかげぎす』『ヒメアノ~ル』『ゲレクシス』は、たまにちょこっと機会がある時に読むだけで、しっかりとは読んでいない。

たぶん多くの人がそうだったのではないかと思うが、『シガテラ』『わにとかげぎす』『ヒメアノ~ル』あたりは「何か同じようなことを書いているな」という印象を受けた。

私は、古谷が「幸福のイメージ」のようなものを再現している、という印象を持っていた。たぶん、それだけではなく、それが破綻した時にある何かを書きたかったのかもしれないが、私には分からない。

私にはっきり分かったのは、その「幸福のイメージの再現」という一点だけだ。

しかし、いつも上手くいかない、もしくは古谷当人が望むほどは上手くいかない。そのために繰り返し消化不良を起こし、もう一度挑戦するが、やはり上手くいかない、それを繰り返しているように見えた。

挫折の価値

私はもう古谷の作品を滅多に読まないが、それでも、古谷が日和ってギャグから逃げたとも、つまらない仕事をしているとも思わない。

難しい仕事をするなら、当然挫折する可能性も高くなる。それなら、その挫折それ自体が通常は有り得ないような挫折なのだから、価値のある挫折なのだと思う。

そしてまた、これから一度でも古谷が成し遂げようとする表現に成功するなら、もう一度『稲中』のように歴史に名を残すようなものが生まれるだろうと思う。

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