小松陽平(東海大)の駆け引きは汚い?鈴木宗孝(東洋大)のタイムと比較してみる

東海大の総合優勝に終わった箱根駅伝2019だが、8区で東洋大の1年・鈴木宗孝を抑えてトップを取ることになった東海大・小松陽平(3年生)の走りが賛否を巻き起こした。

小松選手が見せた駆け引きが、見ようによっては嫌らしく、意地悪く、残酷に見えたためである。

そこでもう一度、8区の小松選手の走りについて振り返って、その是非を検討してみたい。

8区の東海大・小松陽平が見せた駆け引き

8区で東海大の小松陽平が見せた駆け引きは次のようなものだ。

7区を走り終えた坂口竜平(3年)から小松がタスキを受け取った時点で、既に首位の東洋大との差は4秒ほどに過ぎなかった。

小松はそこで東洋大の鈴木の背中にべったりと引っ付くが、すぐに抜こうとはしない。

これは両角監督の指示でもあったらしいが、しかし大きな歓声の中でそれがどれだけ小松に聞こえ、伝わっていたかは分からない。

小松は一度、互いの足が接触してしまうほど近い距離で鈴木を追走し続け、7キロ手前では横に並んで鈴木の表情を確認して、また後ろに下がった。

鈴木は背後からのプレッシャーを感じながら走り続けることで疲労の色が見え始める。また鈴木も一度は東洋大・酒井俊幸監督の助言に従ってスピードを上げて小松を引きはがそうとするが、すぐに追いつかれて元の追走態勢に戻ってしまう。

解説していた住友電工陸上競技部監督の渡辺康幸氏は「小松君は駆け引きがうまい」「タイムは小松君が上。そういう選手が後ろでちょこちょこ駆け引きされると精神的にえぐられる」などと述べる。

こうした駆け引きによって精神的に削られた末に、ついに小松は14.6キロ地点でスパートをかけると、あっという間に東洋大の鈴木を置き去りにする。

【第95回 箱根駅伝 2019】第8区 東海大 小松陽平 トップ交代シーン 2019年1月3日

小松陽平(東海大)の駆け引きは汚い?

小松選手が見せたこのような一連の駆け引きが、ネット上で「いやらしい」「汚い」「クレバー」「手加減する方が失礼」など、賛否両論を巻き起こして話題になった。

たしかに、東海大・小松選手が見せた駆け引きは、見ようによっては非常に意地悪くも見えるものだった。

そこでこうした駆け引きは是か非か、これについてどのようなことが言えるのか、これから考えてみたい。

格上か格下か?

私が興味を持ったのは、翌4日にさっそく東海大は優勝チームとして日テレの番組「スッキリ」に出演しているのを見た時、小松が「ハーフでは鈴木の方がタイムがいいので、自分より格上の相手と思っていた」という発言だった(しかし録画して確認したわけではないので、発言内容の正確性については保証の限りではない)。

私にはこれがとても意外だった。なぜなら解説の渡辺氏が「タイムは小松君の方が上」と言っていたらしいからだ。

そこでさっそく、二人のタイムを比較してみた。

東海大・小松と東洋大・鈴木のタイムの比較

比較するのは5000m走、10000m走、ハーフマラソンの3つのタイムである。

①5000mのタイム
②10000mのタイム
③ハーフマラソン(21.0975km)のタイム

勝っている(早い)方に黄線を引き、なおかつ太線にする。

小松陽平―――鈴木宗孝
13.59.51――14.30.12(小松の方が約30秒早い)
28.35.63――29.17.89(小松の方が約42秒早い)
③1:03.07―――1:02.56(鈴木の方が約11秒早い)

とこのような結果である。

小松が5000m走、10000m走ともに圧倒的に勝っており、鈴木が唯一勝っているハーフマラソンのタイムはたった10秒程度の優位に過ぎず、素人意見にすぎないが、この程度の差ならその日の調子次第で容易に逆転できそうな気がする。

つまり小松の「相手が格上」という発言は、謙遜であれ明らかに大きく誇張されているといっていい。

やはり解説の渡辺氏が話したように、小松と鈴木では明らかに小松の方が地力で勝っており、格上なのは東海大の小松の方である。

最後に

小松選手の駆け引きの仕方は、格上の相手に対して他策がないならばともかく、格下の相手に対してするにしては意地が悪いものに見える。

特に足の接触が意図的ならば、なおさらそうだろう。しかし私はそれを考慮に入れても、それほど小松選手の走り方を批判すべきものとは思わない。

例えば足の接触が意図して行ったものだということでも証明しない限り、駆け引きのすべてはあくまでもルールの範疇に収まっており、少なくともグレーゾーンのもので、明確に批判できる類のものではないからだ。

東洋大の鈴木選手も、このような負け方をして、さぞかし寝覚めが悪いことだろう。

しかし、このけして忘れ得ないだろう敗北の経験が、まだ一年生である鈴木選手を飛躍させるためのバネになればいいと思う。

是非鈴木選手には、この程度のことは単に成長のための肥やしになるに過ぎないということを、来年や再来年の箱根駅伝を通じて証明してほしいと思う。

以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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