米海軍の原子潜水艦で乗組員たちが作った「レイプリスト」が見つかったという、フェミニスト団体によるバッシング必至の衝撃的ニュースがあった。
この事件の詳細と「レイプリスト」の内容について調べてみた。
米軍・原子力潜水艦の「レイプリスト」
日本版のニューズウィークはこのニュースについて次のように伝えている。
<逃げ場のない潜水艦のなかで身の危険さえ感じていた女性たちの不安を、上官は理解しなかった>
米海軍の潜水艦の乗組員らが、同じ艦の女性乗組員を対象に性的魅力ランキングのリストを作成し、わいせつなコメントをつけて共有していたことが捜査により明らかになった。
問題が起きたのは原子力潜水艦フロリダで、女性の乗務が認められた米軍で2番目の潜水艦だ。男性乗組員は、女性乗組員のいわゆる「レイプリスト」を作って回覧していた。しかし海軍幹部は十分な対応を取らなかった。
ミリタリー・ドットコムによれば、リストに関する捜査は情報自由法に基づく請求によって行われた。74ページに及ぶ捜査報告書によれば、艦内では性差別的で不適切な振る舞いや発言が「許容され、上官と部下の間の信頼は存在しなかった」という。
フロリダに女性兵士が乗務するようになったのは昨年2月で、早くも6月には、艦長のグレゴリー・カーチャー大佐の元に複数の部下から問題のリストに関する報告が上がっていた。リストには女性乗組員を星の数で評価するものと、それぞれの名前の後に性的なコメントが書き加えられたものがあった。コメントにはやってみたい性行為など攻撃的な性的活動に関するものもあったが、ミリタリー・ドットコムによればレイプについての記載はなかったという。
対応を渋った艦長は解任
第10潜水艦群の司令官でカーチャー艦長の上官であるジェフ・ジャブロン少将は、フロリダの事件についてこう報告している。いわく、「『レイプリスト』の噂が乗組員全体に広がり、かなりの数の女性(乗組員)が身の安全に懸念を抱く事態となっている。また、このリストについて知った男性乗組員はいずれも嫌悪感を抱いていた」。またジャブロンはこうも述べた。「(艦長による)対応は控えめなもので、どんな対応が取られたか知る者もほとんどいなかった」
捜査報告書によれば、カーチャー艦長はリストが誰の手に渡り、誰が読んだのかを突き止めるための調査を命じたものの、正式な捜査を始めようとはせず、リストの存在についても上官に報告しなかったという。
カーチャー艦長は就任からたった5カ月後の8月に解任された。指揮官としての能力への信頼が失われたためだとミリタリー・ドットコムは伝えている。
まとめると、
- 原子力潜水艦のフロリダで「レイプリスト」なるものが出回っていた。
- 内容は女性乗組員の魅力を星の数で評価したものと、してみたい性的な行為についてコメントしたものの二種類。
- フロリダの艦長はグレゴリー・カーチャー大佐。
- 艦長のグレゴリー・カーチャー大佐が適切に処理しなかったために解任された。
米海軍潜水艦の「レイプリスト」とは?
この「レイプリスト」の内容は、女性の魅力を星の数で評価、そして性的なコメントをしているものの二種類だが、その性的なコメントとは、その女性としてみたい性的行為について書かれていたということだ。
しかしその中にはレイプについての記載はなかったらしい。
さらに「レイプリスト」について調べてみると、それは艦のコンピューターネットワーク上に保存され、定期的に更新されていたということである。
原子力潜水艦フロリダの女性乗組員の数は?
問題が発覚したのは、原子力潜水艦のフロリダだという。
そして問題発覚当時、フロリダの乗組員173人強のうち、女性は32人だった。
意外と女性が多い気がするが、フロリダに女性を乗せるようになったのは昨年2月のことで、まだそれほど日が経っていない。
しかしその4か月後の6月には既にそのようなリストの報告が艦長のもとに入ったということだから、まだ女性と一緒に仕事をする上で社会的に何を注意すべきか、一緒に働く男性乗組員たちは分かっていなかったのだろう。
どのように問題化した?
この問題はどのように発覚したのか?
去年(2018年)6月には既に複数の部下から、艦長のグレゴリー・カーチャー大佐のもとにリストに関する報告があがった。
しかしカーチャーの上官のジェフ・ジャブロン少将は、「カーチャー大佐がさらなる対応をすべきだと認識したのは、リスト発覚から数週間経ってからだった」と不満を述べているので、この時のカーチャー艦長の対応は十分ではなかったらしい。
女性下士官が積極的に動く
また、この時、ある男性水兵が問題のリストを印刷、女性下士官に渡して問題を知らせ、また10日後にリストが更新されたことを女性下士官に知らせた。
この女性下士官が男性の上官にリストを渡して報告。
男性の上官はカーチャー艦長に報告を上げたが、艦長にはリスト問題の調査にかまけすぎているとしてかえって「スローダウン」するよう命じられたという。
それでもここで報告のラインは男性水兵→女性下士官→男性上官→カーチャー艦長という風に繋がっている。
しかしリストを得た女性下士官は、艦の男性上官たちでは十分な対応を取らないとだろうと考え、それだけでは満足せず、ジョージア州ギングズベイの母港にいる上官、それどころか恋人や家族にまでリストの画像を送っていたという。
どのような処罰が下った?
カーチャー艦長の上官のジェフ・ジャブロン少将は、艦長がしっかりした対応を取るのが遅かったとしてカーチャー艦長の解任を上申したということだ。
さらに処罰が下された人間は複数おり、カーチャー艦長が解任された他、最低でも2人の乗組員が免職になり、他にも複数の者が懲罰の対象になったということだ。
たぶん免職された2人とは、「レイプリスト」を最初に作ったか、あるいはそれの管理や更新にもっとも積極的だったということだろう。
カーチャー艦長解任の理由は、問題発覚後も十分な対処を行わなかったという理由であり、「対処しなかった」ということではなく、「対処が十分ではなかった」あるいは「対処が消極的だった」という理由での処罰(解任)である。
最後に
この「レイプリスト」とは何かという話だが、ニュースを注意して読んでみると、「レイプについての記載はなかった」という言葉がある。
ゆえにこれは、要は男性の乗組員が女性乗組員の「ミシュラン」みたいなものを勝手に作成したということ、あるいは学校のクラスでいうところの「女子の人気投票」みたいなものを、成人男性が行ったということだ。
ところがそれに「レイプリスト」などという大仰なタイトルをつけてしまったがために、女性乗組員に大きな不安を与え、問題視される結果となった。
大人がやるにしては少し無邪気すぎるという印象も受けるが、実はその内容は、「レイプリスト」という耳目を引くタイトルほど、過激なものではないのである。
おそらくここでの「レイプリスト」とは、「レイプしたいほど魅力的だ」という意味での一種の誇張表現なのだが、そのような表現法は、女性には理解のできないものだろう。
この問題が「潜水艦」という逃げ場のない完全な密閉空間で起きていることが、なおさら女性乗組員の不安に拍車をかけたということは言うまでもない。
しかしカーチャーの上官のジェフ・ジャブロン少将の「このリストについて知った男性乗組員はいずれも嫌悪感を抱いていた」というコメントが妙に可笑しい。
だったら、そんなものが作成されるわけがないだろう。
如何にも早期に事態の収拾を図りたいという焦りが感じられる。
あるいは世間に向けて、艦に残っている男性乗組員たちのメンツを少しでも守ってあげたいという親心なのかもしれないが。