2019年に入ってから相次いだバカッター・バカスタグラム炎上事件のために、特にTwitterでは「特定班」あるいは「ネット特定班」と呼ばれる者が存在感を増した。
「特定班」とはネット上の限られた情報から、対象となる人間の個人情報を「特定」することから名づけられたものだ。
例えば特定班は顔だけしか出ていない写真や動画から、名前・住所・職場や学校といった個人情報を把握してそれをネット上に晒すという行為をする。
そのことによってネット上の対象者への処罰感情を満足させるという効果がある。
しかし特定班は倫理的には賛否が分かれる存在で、悪事や不祥事を起こした人間に対して道徳的な観点から怒りを覚えている、という点では倫理的であるが、それを法的に許容されていない範囲まで個人情報を晒して処罰(私刑に)する、という点では非倫理的で顰蹙を買うところがある。
そして、ここ最近のバカッター・バカスタグラム炎上事件で有名になった特定班の人間として、(Twitterアカウント名で)「ax」という者がいた。
「特定の神」だったax
axは極端に特定するスピードが速いことから、バカッター・バカスタグラム炎上事件が相次いでいるネット界隈では、ある意味では英雄視もされているような存在だった。
例えば、「これから10分で○○を特定する」と宣言して実際に特定してしまう、という離れ業をすることができた。そのためにツイッター界隈では称賛を浴び、最終的にはフォロワー数は35,000人を超えていた。
axさんって何者w特定早すぎてほんと尊敬してるわ
— 湊いるあ@おたえ狂 (@IRUA_2) 2019年2月10日
このaxさん、特定早いんだわ…
警察就職しようぜ… https://t.co/X7WND11JQd— DAI ㌠ (@dai19482717) 2019年2月10日
特定班のaxが引退
ところが、その「特定の神」のaxが引退することを発表した。
それだけでなく、一時は逆に別の特定班の人間に特定されて追い込みをかけられていた。
いったい何が起こったのだろうか。
ax引退までの経過
ax引退までの経過は、私の記憶が正しければこんな感じだった。
- axが「特定依頼が自分一人では読み切れないほど多くなった」という理由から、協力者を募集のツイート。
- さらにそのツイートを削除し、「自分は特定を続けるべきかどうか」のアンケートを実施。「やめるべき」が多かったら引退すると宣言。
- axが引退宣言する。
- axがアカウントを削除する。
- 他の特定班の人間がaxを特定する(特定の動き自体は削除前からあった)。
※【追記】「ねとらぼ」の記事によれば「活動継続のために支援をして頂きたいと思っております」として「iTunesカード」を求めるなどしたことから自身が炎上し始めた、という。おそらく「1」の中に同時に、その要請が含まれていたのだろう。
協力者募集
まず①については、相次ぐ炎上事件のためにaxは徐々に知名度を上げており、DM(ダイレクトメール)による特定依頼が殺到していたらしい。
そのために本人いわく「自分一人では読み切れなくなった」という。
ところが、その「協力者募集」ツイートはしばらくすると削除されてしまう。
アンケートの実施
※【追記】この時にはおそらくax自身が炎上している。
すると次にaxは「自分は特定を続けるべきか」というアンケートを実施した。
答えは「やめるべき」「やめないでくれ」の二者択一で、「やめるべき」が多ければ特定は引退すると宣言している。
最終的にaxはツイ消しして特定を引退するが、しかし引退はアンケートの結果で「やめるべき」が多かったせいではないようだ。
途中経過を見る限り、アンケートでは3:1で「やめないでくれ」が多かった。
アンケートの文が唐突に脈絡のない「本当にごめんなさい」という言葉で結ばれることからも伺えるように、既に精神的に追い込まれている様子が分かる。
axが引退宣言
そしてとうとうaxは引退宣言をした。
引退理由として「訴訟される恐れがある」ということを述べている。
引退理由でaxは「誤った情報を流した」ということを書いているが、これは以前axが「くら寿司」の炎上事件・当事者の高校を特定した時、「西○○高校」が正しいところを「○○高校」という不正確な情報を拡散してしまったことを言っているのだと思う。
おそらく知名度が上がる中でアンチも増え、ダイレクトメールや他の人のツイートで自分に対して誹謗中傷する人が増えて、それを読むことで精神的にキテしまったのだろう。
そしてダメ押しで「訴訟沙汰になる」という脅しを散々かけられたことが、引退を決めた原因かと思われる。
axがツイ消し(引退)
その後、その引退理由の説明も含めてツイ消ししてしまった。
別の特定班がaxを特定
ツイ消しの前後、ある特定班の人間によってaxは特定された。(特定されたからあわてて消したのか、そこは正確にはよく分からない)
ax引退後、この人は「第2のax」というアカウント名に変えていた。そしてしばらく「axを特定した」という情報を広めていたがすぐにそれを削除してしまった。
もともとこの人は同じ特定班で特定のスピードが速いaxをリスペクトしていたらしく、「axさんの弟子になりたい」というツイートをしたことすらある(今は削除済み)。
そんな尊敬していた相手を逆に特定できたことで浮かれてしまったが、しばらくして正気に戻ったということなのかもしれない。
今ではaxの情報を晒すのはやめたようだが、一時はまるで同族の食い合いのようで異様な態だった。勝手な推測だが、DMなどで誰かに咎められたのではないかと思う。
そして「第2のax」というアカウント名も元のアカウント名に戻している。
【追記】ax(第2のax)を特定した人間のアカウントが凍結されてしまった。「特定」という行為をしていることを喧伝しているアカウントが、狙い撃ちにされているのかもしれない。炎上事件の連続によって「特定」という行為がSNSで盛り上がったが、徐々に大っぴらにできなくなりつつ可能性もある。
axの引退を惜しむ声
当然axの引退を惜しむ声はある。
特定・ネタ・晒しのaxさんが引退したみたいですね。
私が引退の理由なんか知るわけないけど、
やっぱり責任が重かったのかな
グループ活動についての発表ツイすぐに消えてたし(´・ω・`)— 968 (@crude_B8n3_) 2019年2月11日
バカッターを特定するリアルハングマンのaxさんアカウント消したんだ…
少なからずバカッターの抑止になってたと思うんだが、なんか残念だ…。 pic.twitter.com/4zvGBsF5jA— 雲助@北村ヘクト一輝(´・Д・)」 (@kumosuke_00busa) 2019年2月11日
一転してaxがネットリンチの対象に
しかし泣きっ面に蜂で、ツイ消ししたaxをさらに責める声も多い。
特定イキリ陰キャをあえて演じて、特定してイキると炎上することを教えてくれたax先生に感謝感激やで^^
— 杮の種 ピー助 (@GodUnkoMaster) 2019年2月11日
axとかいう正義の味方ぶって承認欲求満たすイキリ陰キャ消えたみたいで良かったわ
人のこと特定する癖に自分がその矛先になりそうになったら
個人情報拡散すると法的処置をされるかもしれないのでやめた方がいいです
とか盾作って逃げてるの滑稽すぎるんだが— きみきみ (@daayama1001) 2019年2月11日
特定班とかカッコつけて自称しとるけど「確実性も無い情報を無闇矢鱈にバラ撒くネットリテラシーが備わってない無能」の方が当て嵌っとるのでは pic.twitter.com/fqZCG2kc7B
— 廃羅化 (@kusomushi072) 2019年2月10日
axも調子乗りすぎ他とこあるけど追い込む必要は無いだろ
それじゃあ、お前らもやってる事同じじゃん
次、バカッター来たら特定よろしくね^^— 狭⃠霧⃠ @リプ遅返常習犯 (@sagiri_0831) 2019年2月11日
ネット特定班の有名人 ax が引退した理由は?まとめ
特定班の人間に強い承認欲求や自己顕示欲を指摘する人間がいる。当然それはあるだろう。また裏返せばそれは周囲の声をそれだけ気にしているということだ。
最初のころ、axの周りには特定行為やその速さを称賛する人たちしかいなかったと思える。
しかし名を上げるにつれてaxは、アンチや、あるいは有名人を妬み人や、あるいはもともと特定を良く思っていない人の格好の標的になってしまった。
axはそこで突然悪し様に言われ出すことで悩んだのだと思う。していることの大胆さに比して、そうした集中砲火に耐えられるほどaxは図太くはなかったらしい。
(私はもっと若いと思っていたが)axは大学生だったようで、年齢のせいで経験不足だったこともあるのだろう。そうした場合の対処に困っている様子が伺えた。
自分のしていることが正義だと信じたのに、突然そうではないと否定する人が周囲に増え始める。そこで自信を失い始め、さらに「訴訟になる」などの脅し文句で完全に心が折れてしまったというところだろう。
特定行為をするということは、自分自身が特定される可能性と背中合わせだ。
2チャンネルのようなところでこっそりその情報だけを出すのなら比較的安全かもしれないが、ツイッターのアカウントを用いて情報を出せば、特定されるためのヒントを与える可能性がある。
結局、特定班の標的となるバカッター・バカスタグラム事件は「ネットの怖さを分かっていない」人によって引き起こされると考えられていたが、しばしば特定班の人間自身も「ネットの怖さを分かっていない」のかもしれない。
正直に白状すれば、私も若い頃にネットで苦い経験をしたことがある。だから多かれ少なかれネットに関わると、誰でも一度くらいはそういう痛い目を見るのかもしれない。
願わくばその「一度」が取り返しのつく程度の痛みで済めばいいということだ。
周知のように、しばしばそうでないこともあるからだ。